瞬膜フラップ術(眼球瞬膜被覆術)

角膜の中央に潰瘍

4歳のシーズーさんです。

右眼が白く濁っており、ショボショボさせているとのことで来院されました。

眼をチェックすると角膜の中央に直径約3mmの潰瘍(くぼみ)がありました。さらに角膜の辺縁が赤く見えますが、これは白眼から潰瘍部に向かって伸びた血管で、傷を治す成分を血流に乗せて潰瘍部まで運ぼうとしている状態です。

まずは内科的に治療をスタートしましたが、途中で内科的治療では改善が難しいと判断し、眼球瞬膜被覆術(瞬膜フラップ術)を行うことになりました。

手術前の様子

手術前の右眼の状態です。角膜潰瘍部は脆弱で薄くなっており、眼球穿孔(角膜に穴が開いて眼の中の水が出てくる状態)を起こす寸前の状態です。

瞬膜を結膜に縫い付ける

下まぶたの内側にある瞬膜と呼ばれる部分を上まぶたの内側の結膜に縫い付けて、瞬膜で眼球をすべて覆い被せます。

瞬膜は血管が非常に多いので、潰瘍部を直接覆うことで治癒が促進されます。
上まぶたに瞬膜を縫い付ける時に、糸の結び目が直接まぶたの皮膚に当たってしまうと、糸にかかる力が結び目一点にかかり皮膚が裂けたり、糸が食い込んだりしてしまう場合があります。

そのため皮膚と結び目の間に1枚の板状のビニール樹脂を咬ませることで、皮膚と結び目が直接当たらないように、また糸にかかる力が分散されるようにします。

この状態で3週間経過を見ました。その間は縫合部を掻かないようにするため、エリザベスカラー(ネッカー)の装着は必須です。

手術3週間後

手術から3週間後の様子です。外からのチェックでは大きな問題はないので縫合糸を抜糸しました。

抜糸

抜糸したところです。

潰瘍は完全に塞がって、角膜表面に段差もありません。

潰瘍だった部分には細かい血管が密集し赤く見えます。

抜糸後1週間

抜糸後1週間の状態です。

潰瘍が深かったため、完全に透明な角膜には戻ることは難しく、傷跡として角膜が少し白く濁った状態で治癒します。

抜糸後2週間

抜糸後2週間の状態です。潰瘍部に広がっていた細い血管が無くなり透明度が増しました。

抜糸後1ヶ月

抜糸後1ヶ月の状態です。白目から伸びていた太い血管もだいぶ細くなりました。

潰瘍部の白い傷跡はどうしても残ってしまいますが、日常生活には支障を及ぼさないレベルなので治療は終了としました。

抜糸後3か月

抜糸後3か月の状態です。

白目から伸びていた血管は完全に無くなり、潰瘍だった部分以外の角膜は透明度が保たれています。経過は良好です。