アレルギー性皮膚炎
初診時





初診時5歳の柴犬さんです。
半年前から口周り、両脇、両内股、おしり周りを痒がり脱毛しているとのことで来院されました。
外見からはアレルギー性皮膚炎が強く疑われたため、アレルギー検査のお話もさせて頂きましたが、まずは「アレルギーと仮診断して治療してみる」ということになりました。
アレルギーの治療では、過剰な免疫による痒みを抑えることが必須になり、選択肢としてステロイド、抗ヒスタミン剤、免疫抑制剤などの内服やイヌインターフェロンγの注射などがあります。
それぞれの治療法にはメリット・デメリットがありますので、その点を充分にご説明致します。
今回は患者さんとの話し合いの結果、まず低用量のステロイドと抗ヒスタミン剤を用いて、症状が落ち着いてきたら徐々にステロイドの量を減らしていくことにしました。
また脱毛部の細菌感染も認められたため、抗生剤の内服および薬用シャンプーによる治療もスタートしました。
1ヶ月後





治療開始1ヶ月後の様子です。痒みは落ち着き、脱毛部にも新しい毛が生えてきました。
2ヶ月後





治療開始2か月後の様子です。皮膚の検査で細菌の数が正常の範囲になったのを確認したので抗生剤の内服を無しにしました。
半年後





治療開始半年後の様子です。
痒みは抑えられており、皮膚の状態も良好です。
今回から、さらにステロイドの内服量を減らすために、イヌインターフェロンγの注射を併用することになりました。
アトピー性皮膚炎は免疫機構のバランスの乱れが関与しているとされており、インターフェロン療法は乱れた免疫バランスを修正する治療法で、いわば体質改善を促す治療法です。
まずは週2回の注射からスタートし、状態が維持できていれば徐々に注射の間隔をあけていきます。
1年後





治療開始1年後の様子です。
症状の悪化は認められません。
ステロイドの内服量は治療開始時の1/2に減らせており、インターフェロンの注射は2週毎に1回のペースで行っています。
2年後





治療開始2年後の様子です。
痒みもなく皮膚の状態も良好です。
インターフェロンの注射は2週間に1回のペースで継続しています。
アレルギー性皮膚炎には、様々な治療法がありますが、ペットさんの皮膚の状態や家族の方のお考えにより、選択する治療法が変わってきます。
「アレルギー性皮膚炎にはステロイド薬が有効」ではありますが「ステロイド薬には副作用がある」ということは、広く知られていることではないでしょうか?
「ステロイド=悪」というイメージを持たれている方もいらっしゃる薬かもしれませんが、使用量や使用回数を可能な限り減らすことができれば、副作用という「悪」の部分は最小限に抑えることができます。
また、ステロイド薬には弱いものから強いものまで色々な種類がありますので、なるべく弱いステロイド薬を選択することも副作用を抑えるには重要です。
今回のケースでは、薬用シャンプーなどの治療も併用し、アレルギー性皮膚炎の治療に使用される通常量よりも少ない用量で著しい効果が見られたため、途中でインターフェロンγの注射治療を併用しながら、ステロイドを徐々に減らしていくという形で治療を継続することができました。
ステロイド薬の使用量を減らすことができないケースでは、ステロイド薬ではない治療法も検討する必要があります。