皮膚欠損部整復術(裂傷など)

左後肢の内側の皮膚が欠損

軽自動車に轢かれてしまったとのことで来院されたワンちゃんです。

検査の結果、内臓や骨などに大きな損傷はありませんでしたが、ご覧の通り左後肢の内側の皮膚が大きく欠損していました。

壊死組織を切除

近くに寄って見てみると、欠損部の周りの皮膚も変色し壊死(皮膚が死んでしまっている状態)していることが分かります。

このような壊死した皮膚同士を縫い合わせても癒合(傷がくっつくこと)しないため、まずは壊死組織を切除して新鮮な皮膚同士を縫える状態にします。

 

筋肉を合成吸収糸を使用し縫合

壊死した皮膚を切除すると、筋肉が損傷し骨が一部露出している部分が出てきました。

筋肉を本来あるべき位置に戻してあげる必要があります。

感染を起こしにくい合成吸収糸を使用し縫合をしていきます。

筋肉の縫合が終了

欠損した筋肉を本来あるべき位置に縫合した状態です。

露出していた骨が見えなくなりました。

 

皮下組織縫合

次は皮下組織(皮膚の下にある脂肪や結合組織を総称したもの)を同じく合成吸収糸で細かく縫合し寄せていきます。

寄せていくことで皮膚を縫合した時に離解してしまうことを防ぐことができます。

縫合終了

皮膚の縫合を終えたところです。

皮下組織を寄せておいたことによって、皮膚の縫合部には張力(皮膚が離解する方向にかかる力)が殆どかかっていません。

張力を可能な限り少なくしておくことは、スムーズな癒合と傷跡の残りにくさに関係するため大変重要です。

 

手術4日後

手術4日後の写真です。傷跡は特に問題なく、交通事故での周囲の腫れもだいぶ引いてきていました。

化膿することもなく順調でしたので、この10日後に抜糸を行い治療は終了となりました。

交通事故にあったにもかかわらず、後遺症もなく回復出来て不幸中の幸いといった一件でした。皆さんも交通事故にはくれぐれも気を付けましょう。